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庄内通の家

桜を眺めて暮らす

(木造)

施工   造家工房・亀井

施主のIさん御夫妻は、十数年前に私が手がけた住宅に飛び込みで訪ね、事務所にお越しになられた。ありがたい話である。

 

共働きのご夫妻は、どうやら数年かけて土地を探されたようである。地下鉄駅に近い利便性の良い場所で、一部近隣商業地域がかかる用途地域だが、大通りから少し入っているため良好な住宅地となっている。南側前面道路に沿って水路が流れ、歩道は桜並木となっていることが周辺環境を特徴づけている。間口の狭い典型的都市型の敷地であるが、敷地正面、前面道路を挟んだ向こう側歩道には桜の老木が位置している。全体計画はこの桜と共にあると言っていい。

 

建設に興味のあるIさんは、ご自身でも一定の作業経験がある様子なのを知って、施主参加の建設も念頭にいれた。結果として室内外の着色塗装工事、敷地前面天然石敷き込工事の大半は御主人の手に拠る。仕事の合間をぬっては頻繁に現場に足を運ばれていた。住まいの主体である施主が自ら建設に参加することは、商品化されてしまった住宅という器に命を吹き込む意味でも、さまざまな気づきの場としても非常に有意義なことだと私は考える。当然、設計・監理者の私も材料調達の段取りや施工指導、現場との連携アレンジ等やれることはなんでもやらねばならない。設計者はとかく目に見える形の操作のみで建築と向き合おうとするが、当たり前のことながらデスクワークでのみのアプローチは深みあるアウトプットには向かわない。

 

 

割石の敷き込を辛抱強く手掛けたIさんは、終盤には造園家も驚くほど腕を上げた。となると最初に敷きこんだものが気に入らなくなった御様子。「またあの部分はめくってやり直そうかな~(笑)」と言っていた。施工は日常生活の中でエンドレスに続く?・・・・

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